
2025年2月7日(金)13:00から、全国専門学校日本語教育協会主催の第37回日本語学習外国人留学生日本語弁論大会が代々木にある文化学園で開催されました。新宿日本語学校からは、上級Ⅰ進学クラス、モンゴルのグンデさんが出場し、みごと奨励賞を受賞しました。その時のスピーチ原稿を掲載します。

思い出
私は、良い思い出は生きる力になると思っています。
私は来日してからもう9カ月になります。最初は、新聞配達の仕事と学校をうまく両立することができなくて、慣れるまで簡単ではありませんでした。
ある日、胸が切なくて、泣きたくなり、ルームメイトに心配をかけたくないので、「コンビニへ行ってきます」と、うそを言って外へ出かけました。誰もいない公園に行って、ブランコに座って、たくさん泣きました。
伝えたいことがあっても日本語で上手に話せない、相手の言っていることもよくわからない、試験の点数も良くない、もう散々でした。その上、この日、留学生にとって、一番大事な在留カードと、財布すべてをなくしました。元いた場所へ戻って、探しても、警察に聞いてみても見つかりませんでした。これまでいつも「頑張れグンデ! あなたは何があってもできる」と言い聞かせてきた私ですが、その日はもう力がなくなり、ただただブランコに座って、涙があふれていました。
ちょうどその時、モンゴルの母から写真が送られてきました。アイスクリームの模様がある黄色いドレスを着た私と両親が一緒に写った写真でした。
懐かしいですね。そのドレスをプレゼントとしてもらった、7才の誕生日が昨日のことのようです。母は「グンデの誕生日だから好きな料理を作ってあげるわ」といって、カチャカチャと、料理を始めました。まもなく、父が帰ってきました。父の姿を見て、遊んでいた弟2人と私は大喜びしました。父は「私のかわいいグンデ、お誕生日おめでとう」と言いながらバッグからあの黄色いドレスを出しました。私はそのドレスを見て少しがっかりしました。「お父さん、どうしてピンクじゃないの?グンデはピンクが好きだよ」と言いました。その時、父は「太陽は黄色でしょう。グンデは明るくて、暖かい心を持っているから、この色もきっと似合うと思ったんだ」と言いました。「じゃ、グンデはお父さんの太陽だね」と喜んで、大きな声で笑いました。本当に幸せな気持ちで満たされていました。
その思い出が浮かんできて、泣いていた私は、すぐ心が晴れて、落ち着きました。その日から太陽の暖かさを感じるたびに、この思い出が心の中に浮かびます。
このことから悲しくて、諦めそうになった時、辛くて迷った日々に、良い思い出は心の中を灯してくれ、私たちを支えてくれることがわかりました。
私はこれからも良い思い出を大切に持ち続け、嫌な思い出は良い勉強になったと思うことにして、さらに、今後もっと豊かな思い出を作っていきたいです。しかし、そのためには、今この瞬間を大切にすることが必要です。家族や友達の絆を深め、小さな喜びを見つける習慣を持ちたいと思います。
私たちの心には、思い出という種を蒔くことができます。その種がやがて大きな木となり、私たちを支える豊かな森を育ててくれるでしょう。皆さん、これからも幸せな思い出をたくさん作り、自分自身の森を育てていきましょう。
ご清聴ありがとうございました。